特例措置対象事業場(1週44時間)の特例

労働基準法は、1週40時間労働を基本としています。
つまり40時間を超えると割増賃金が必要になって来ますが、一定の業種及び規模に該当する事業場については「1日8時間、週44時間」まで労働させることが可能となっています。この事業場を「特例措置対象事業場」と言います。
就業規則や雇用契約書で記載することで効力が発生します。

商業卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
映画・演劇業映画の映写、演劇、その他興業の事業
保健衛生業病院、診療所、社会福祉施設など
接客娯楽業旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客業

上記に該当する業種で、その事業場で10人未満が対象です。
該当しそうな業種で特にイメージしやすい所を挙げると、多いのは飲食店、町の小さな病院や福祉施設などです。
従業員が10人を超えると44時間の特例は使えなくなりますので注意が必要です。

特例措置対象事業場 導入のメリットは?

この1週44時間制は1か月の変形労働時間制との併用が可能ですので、最大194時間までの残業代が不要となります。この制度を使わない場合は177時間までなので、残業代対策として経営者視点では有効となります。

1週40時間の事業場1週44時間の特例事業場
31日の月177時間194時間
30日の月171時間188時間
28日の月160時間176時間

1週44時間制を導入する場合は就業規則や雇用契約書で従業員に伝えておくことが必要です。
これができていないと無効になるので注意が必要です。
通常の事業場は、原則として1日8時間または週40時間を超えて行わせた労働が時間外労働となりますが、特例措置対象事業場は1日8時間または週44時間を超えるまでは時間外労働として取り扱われません。

「常時使用する労働者」とは?

労働者数は事業場ごと(店舗ごと)にカウントします。
全社で100人の労働者を使用していたとしても、各店舗で常時10人未満の労働者しか使用していない場合は特例措置対象事業場となります。
同じ会社が運営している店舗であっても、常時10人未満を使用している店舗は特例措置対象事業場となり、常時10人以上を使用している店舗は特例措置対象事業場になりません。
また、パートやアルバイトなどの有期契約の労働者であっても、通常の事業運営に必要な労働者であれば常時使用する労働者としてカウントします。
繁忙期に一時的に雇い入れる労働者であれば、常時使用する労働者に含まれません。

変形労働時間制との併用

44時間の特例は変形労働時間制と併用できるものと併用できないものがあります。

■44時間制のデメリット
実際に働いてみると分かりますが、週の労働時間が4時間増えることは従業員視点で考えると長く感じます。
確かに44時間制を導入することで会社は残業代の負担を抑えることができますが、あくまで従業員が10人未満の時の臨時の措置という気持ちで将来的には他社と同じように週40時間にするという目標が大切だと思います。
新型コロナウィルス感染拡大による生活様式の変化、働き方改革といった、現在の風潮において、経営者目線だけで物事を考えると、新たな人材確保が難しくなったり現在の人材流出にも繋がりかねません。
この特例は、事業所の経営基盤強化として有効活用しつつ、並行して事業所全体の働き方改革と言った「人が集まりやすい・離職が少ない職場作り」を進めていくことが大切になります。

  1. 併用できるもの
    1ヶ月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制
  2. 併用できないもの1年単位の変形労働時間制、1週間単位の変形労働時間制
    →こちらは週40時間が上限となります。