身近な労務問題!『昇給あり』と記載をしていたら昇給は必ずする必要がある?

「就業規則に『昇給あり』との記載があるのに、これまで1回も昇給がない」といって従業員が昇給を求めてきました。
コロナ禍に加え、原材料高などのさまざまな影響もあり、ここ数年は業績が悪化しているため、雇用維持で精いっぱいの状況です。
就業規則に『昇給あり』と記載していたら、必ず昇給をしないといけないのでしょうか?


結論

昇給に関する規定が就業規則で定められている場合、雇い入れ時に従業員に明示することが必要です。
ただし、明示は必須ですが、昇給そのものは義務ではありません。
そのため『昇給あり』とのみ記載されているにもかかわらず昇給しないのは法令違反ですが、「昇給しないこともある」といったただし書きがある場合は、その限りではありません。

就業規則に昇給の記載は必須
昇給しない場合の付記がポイント

労働基準法では、『昇給に関する項目』は就業規則に必ず記載しなければならないと定めており、雇い入れ時の明示が義務づけられています。
しかし、その内容については法律上の決まりはなく、「昇給なし」でも法令違反ではありません。
一般的には、就業規則に「昇給あり」として、業績や勤務成績などによっては昇給しない場合があると付記しておくケースが多くみられます。
ただし、「毎年○%の昇給」といった記載をしているにもかかわらず、それに沿っていない場合は、契約違反となります。

昇給しない場合には
従業員が納得いく理由の説明を

従業員にとって昇給するかどうかは、自分自身に対する企業からの評価を測る目安となります。
そのため、景気の影響による業績悪化など、従業員個人の勤務内容以外に昇給をしない理由がある場合、丁寧に説明することが大切です。
また、ほかの制度(賞与やインセンテイブ)などで、日々の貢献に報いる仕組みを導入したり、どのような場合に昇給が可能になるのかを示したりするとよいでしょう。
昇給なしや低評価の場合には、従業員との密なコミュニケーションが、一層大事になります。